……すか…　…こえ…　…聞こえますか…？

…アナタ達に、お願いがあります。
夢の樹があの空から消えてしまった、そのコトで…。

レム・ワールドに、かつてない危機が訪れようとしています。

夢の世界に閉じ込められて、目覚められないのです。
そして…このままでは、この世界ごとワタシ達は消えてしまう。
そんな世界はあってはなりません。
どうか…どうかアナタ達の力を貸してください！

《ウール・ボワ》の島で、ワタシは待っています。
会いに来てください…この夢を終わらせないために！

では…。パンセレネの者のみならず、
世界中の民が「森の夢」を見たと言うのだな。

はい。各地からそう報告が届いています…。

騎士団も調査に向かっております。
…ですが、島には飛べても先に進めないと先程、連絡が。

ふぅン？先に進めない、ねェ〜…。
主に何かあったのかしらァン。確か魔女が持ち主よねェ？

ええ。ルボワ様には、我が国から《夢の樹》の管理もお願いしています。
あの謎の樹を守るには、仮でも主が必要でしたから…。

その事もありますから、彼女とはどうしても話をせねばなりません。
ディアマント、ペルラ。お願い出来ますか。

…許可無くの訪問は信条に反するが、異常事態なら止むを得ない。
彼女は私の友人でもある。話は後から通そう。

ヒトの夢島には手ェ突っ込みたくないけれど…ま、しょうがないわねン。
空間はナンとかしておくワ。騎士団ちゃん達、頑張んなさいよォン。

この城は、皆の傷や疲れを癒す羽根の休め処といたしましょう。
私も皆を癒すため尽力します。どうか、どうか気をつけて、アスセーナ…。

はっ！

……ま、まじっすかソレ！？

森の調査に一般人を連れて行く、と…？

…ああ。あの夢を見たのは私達だけでない。
民衆の中には、森へ向かった者も現れていると…報告がな。

島の入り口までしか進めないおかげで、被害は出ていないが…。
じきにそれも大臣様の異能で解決する。放ってはおけまい。

ならばこちらで有志を募り、騎士団の庇護のもと進めば良いと。
そう、会議で決定したのだ。

ムチャクチャっすねー…！

全くね。まあ、気になるのは理解るけどさ。

リコリス、ルシエル。お前達をその有志の引率役に任命する。
あの森も何が起こるか予測出来ん。しっかり護るのだぞ。

・

…はい！！

以上に御座います、主君。

ご苦労だ、朔。
…入り口はパンセレネの奴らがこじ開けてくれると来たか。

それは実に好都合でございますね、ノクス様。
しかし…彼奴らを待つとなると、遅れを取ってしまうのでは？

試しては見たがあの森、クロの雷撃でもビクともしやがらなかった。
空間への干渉は難しい。奴らの専売特許だな…。

…まあいい。一度開きさえすれば後はこっちの物だ。
朔、引き続き監視と報告を頼む。

御意。

ピエトロ！会議の続きだ、クロとシロを呼べ。
オレ達も布陣を整えるぞ！

…ノクス様。
もしや、ご自分で森に乗り込まれるおつもりで？

後に続くならば騎士団らとの衝突は避けられません。
お言葉ですが、頭が直々に赴くのは少々危険かと…。

はっ。オレがあんな奴らに殺されるとでも？

でかい獲物を前にして…椅子で寝こけるような真似、オレはしない。
自分の手で奪い取るんだ。必ずな！

…さようでございますか。

有志の皆様、お集まり戴き有難う御座います。
我々は今回この特別部隊の指揮を執る事になりました、騎士団の者です。

皆さんは騎士団の指示に従い、はぐれないよう気をつけるっすよ。
俺たちを信じてついてくるっす！

《三日月の羽根騎士団》の誇りを以って、この任を成し遂げてみせよう。
夢世界も、有志の民も、必ず我々が護り通すのだ。良いな？

同志諸君！聞け、時は満ちた！
今こそ《アルナディア》がこの世界を手に入れるその時だ！

主様の目的はバーさんと嬢ちゃんの誘拐だ！
オレたちゃ好きなだけ暴れ回って良いんだとよ！ガハハハハ！

貴方達の意志、ノクス様の意志…。私に止める事は出来ません。
その真実が曇らぬよう、追い駆けなさい。

キィィィィン…！

…うむ。成程、強力な結界が張られていたのか…。
解除には成功したようだ。これで先に進め…　　…？

……っ！？

！　何者っすか！？

えっ　え？？　あれ、なんででしゅか…？

女の子…？
いや…でも、夢に出てきた子とは違うね…。

……。驚かせてしまい申し訳ありません、お嬢さん。
私共はパンセレネ王国の騎士団です。この森の主を訪ねて参りました。

騎士団…？

わ、わたしは…フルール、と申しましゅ。
この森のお花畑でお兄ちゃんと一緒に暮らしてる、でしゅ…。

フルールさん、ですか。
私はアスセーナと申す騎士です。以後お見知り置きを。

は、はい…。
あのっ！どうやって結界を…？

どうしてもルボワ様にお話を伺いたく、この世界の空間を司るペルラ様に力を貸して頂きました。
…我々は夢を見たのです。レム・ワールドに今、危機が訪れていると。
そして世界を救うためにはまず、ウール・ボワを訪ねよ…とのお告げを受けました。

突然押し掛けてすみませんね。
まあ…諸事情で騎士以外の者もおりますが、決して怪しい集団ではありませんので…。
ルボワ様の旧友、ディアマント様から手紙も預かってます。はい、どうぞ。

！　……たしかにこれは、ディアマント様の筆跡…。

……わたしとお兄ちゃんは、恩あってルボワ様にお仕えしていましゅ。
夢の樹が消えたことも、もちろん知ってました。

けれど、ルボワ様、あの日からずっとお家にこもって出てこなくって…。
今日もこれから、お見舞いに行く所だったんでしゅ。

…ふむ、そうなのか…。

フルールさん。ルボワ様の元まで案内していただけないでしょうか？
貴女方の事情と、私達の目的は何か関係が有るのかもしれません。
お互いに力を貸し合いましょう。

…そう、でしゅね。わたし達だけではどうにもなりませんでしたから…。
わかりました。お連れしましゅ！
どうか気をつけてくだしゃい。この森、迷子になりやしゅくて。
それに最近………ま、魔物が出るんでしゅ…。

ここにもっすか！？…増えてますね、近頃…。

アポロの町でも見かけるようになったね。
各地で発生する魔物の異常現象…これも夢の樹と関係が…？。

ご安心ください、我らは騎士です。貴女の事も必ずお守り致しますよ。

！　…えへへ。それは頼もしいでしゅね♪

しっかしまあ、あの邪魔な結界もすっかり消えちまったな。
ガハハハハ！敵ながら大したもんだ、空間の異能ってヤツァ！

まったくだな。忌々しいやつだ…。
…それにしても、まだ婆さんの拠点には着かないのか？

う〜ん…。それがねー、
変な気にやられてレーダーが上手く作動してないみたい…。

つまり…迷子だよ！
ごめんねノクスちゃんっ♪

……クォオォオオォォ…！

…おい！後ろっ…！

ザシュッ！！！

・

……！？

ッカア〜！ゴロゴロ沸いてきやがんなァ…。
……あ？誰だァテメーらァ…？

見慣れねー顔だなァ。客人か？
ハッ！あのクソババアが客なんて呼ばねェか！

…助けてくれてありがと。
キミこそだあれ？この森の子？

オレサマか？オレサマの名はグリーディ！
ちィと訳あってこのクソつまんねェ森の番をしてんだよォ…。

んで、テメーラは何モンだ？侵入者ってヤツかァ？

（！…グリーディ、こいつが例の獣人か。）
…もし、そう名乗ったら、どう出るんだ？

アッハッハ！どーもしねェよォ！
別にオレサマはあのババアがどうなろうと構いやしねェからなァ！

ガハハハハ！まあ随分と威勢の良い犬っころよ！

犬ゥゥゥ！？オレサマァ！オ・オ・カ・ミだァ！！！
喧嘩売ってんのかテメーらはよォ！グルルルルゥ…

まさか！その逆だ、グリーディ。
ひとつ聞くが、お前は《アルナディア》という組織を知っているか？

！！

心当たりがあるなら話は早い。オレの名はノクス。このアルナディアを率いる頭だ。
招かれてはいないが、オレ達はその婆さんとやらに会いに…
…いや、迎えに来た、と言うべきだな。

ややこしい喩えは無しにしよう。オレ達は婆さんを攫いに来た！
これといった恨みはないが、森で時間を潰せば喧しい騎士共が雪崩れ込んでくる。
島でゆっくりと…話を聞かせ願おうと思ってな。

………。

話が終わったら…どうするか。正直、そこまでは考えが無くてな。
だが…お前の「とある訳」とやら、このオレ達が叶えてやれるかもしれない。
アルナディアに協力しないか？グリーディ。

なーんにも難しくないよっ！
このハチャメチャな森の道案内をしてくれるだけでいいのっ♪

主様よォ、こんなヤツに任せて大丈夫かァ？

だーいじょぶだいじょぶ！ワンワンはこーいう時ヒトより活躍するって！

余計な口を挟むな。
…どうだ。悪くない交渉だと思わないか？

………。
…ククッ…。…アーッハッハッハァ…！！！

ガキ。テメーがオレサマの長年の望みを叶えてやるだァ？
…いいぜェ。ヤレるモンならヤってみなァ。

上手くいきゃあのババアは腹ん中、下手打てばテメーらがオレサマの腹ん中！どう転んでもウマい獲物だ！
逃がさねェよ…ガルルルル…！！

…来たね。
どちらもまあ随分と沢山引き連れて。森が騒がしくなるね…。

何事も無く辿り着ければ良いんですが…。
ところで、僕はどうしましょう？ルボワ様。

お前はあたしとこの子を護っとくれ。
あんまり度が過ぎたら、迎えに寄越すとしよう。

承知しました。
…無事で居てくれよ、フルール…。

………。

　

　

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