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あたしはルボワ。時間を操る魔女で、この島の主さ。
知っての通り、夢の樹はあたしのもんじゃあない。
満月の大臣とは古い付き合いでね。頼まれて面倒を見ているんだよ。
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夢の樹は夢島と思われる。だが持ち主の行方が判らない。
レム・ワールドの実権を握るのはお前らパンセレネだ。今の所はな。
…不安定な物はなんだって管理しやがる。
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………。
ルボワ様、続きを。
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…ああ、少し待っとくれ。
あたしよりも、あんた達に話したくてたまらない子がここに居るんだ。
出ておいで、エメ!
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!!
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………はい…。
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貴女は…お告げに出てきた娘さん、でしょうか。
我々がこの世界を初めて夢に見た時も、確か…。
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ハイ。
ワタシは夢世界の案内役…エメと名乗っています。
きっと、ココにいる全ての皆さんにお会いしたコトがあるハズです。
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夢の樹は夢島と思われる。だが持ち主の行方が判らない。
然しそれ以上を語らず、現れては消える存在が「エメ」。
…お前は何者だ?夢の樹の行方を、知っているのか?
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………。《夢の樹》は、《レム・ワールド》と《現実世界》を繋ぐ不思議な大樹。
ワタシは…樹に咲く花のひとつが大きくなり、こぼれ落ち、感情を持ったモノ。
夢の民ならぬ《夢の花》、とでも言えましょうか。
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樹を管理するようになってから、あたしはこの子と知り合ってね。
無人の島に放ってもおけず、ここに身を寄せさせたのさ。
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ワタシが樹から与えられた役目は、夢の世界を訪れる皆さんを導くコト。
誰が樹の持ち主か、なぜ消えてしまったか、今ドコにあるのか…。
ワタシにも、判らないんです。
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………そうか。
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夢の樹は必ずこの世界のどこかにある。
ワタシがまだ消えていない…それが何よりの証拠です。
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でも、アナタ達は夢の中に閉じ込められてしまいました。
樹が何かしら異常を引き起こしているに違いありません。
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放っておけばきっと…本当に、樹は無くなってしまう。
もしもレム・ワールドに「終わり」があるなら…その時、でしょう。
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終わり…?
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時の神ディアマント、空間の神ペルラ。
彼らの力でレム・ワールドは保たれている、それも事実です。
けれど何より、この世界を支えているのはアナタ達自身…。
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たくさんの生き物のエネルギーがこの世界に眠っている。
普段はバラバラに過ごしていても、出口はひとつだけ。
誰しもが必ず通る夢の樹は、最もエネルギーが集まる場所なんです。
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百年積み重なり、樹に秘められたエネルギーは…とても膨大。
使い道が違えば世界だって滅ぼせてしまう、大きな大きな力…。
今はその力がレム・ワールドを支える核になっています。
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あの樹はこの世界の心臓のようなものさ。
消えちまったら…あたしらも道連れだろうね。
…この森に増えた魔物も異変の一環。今までこんな事は無かったよ。
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そっ、そんなぁ…!
どうすればいいんでしゅか…!!
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樹が原因で起きた異常なら…取り戻せば、世界は救われるハズ。
…アナタ達に、消えた《夢の樹》を探して欲しいのです。
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…!?
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ざわざわざわ…
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さ、探す…って言っても…。
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…何も、闇雲に探せとは言わないさ。
この森のように、レム・ワールドのあらゆる島で今後異変が発生するだろう。
それらを辿って行けば良い。
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異変…。
ルボワ様には、それが視えていらっしゃる、と?
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ちいとばかしだがね。
時間も場所も判りゃしないさ。けれどね、必ず何かが起こる…。
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樹は行方知らずに留まったが、本当に滅びるものも、出てくるだろう。
レム・ワールドが壊れゆく未来が、あたしには視えるのさ…。
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……………。
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ワタシは夢に咲いた花。眠る命を見守りし者…。
幕の明けた大きな流れに手を出すコトは出来ません。
運命を変えられるのは、この夢を見ているアナタ達だけなんです。
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…あんた達の抱くものは大きく違う。
それはどちらも決して正義なんかじゃあない。だからこそ託すのさ。
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パンセレネとアルナディア。
二つの異なる大きな思想が、競い合い、掴み取る未来…。
それこそがレム・ワールドの辿るべき道になるでしょう。
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…私達に、今再び争えと、申すのですか。
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戦争じゃあない…そう、競争さね。
これから起こる危機を乗り越え、夢の樹に辿り着くんだ。
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さしずめ、世界の命運を掛けたゲーム…といった所か。
…面白い!乗ってやろうじゃないか。
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…私の一存で決断を下せる話ではありません。
ルボワ様、そして少女エメ。少々お時間を頂けますか。
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ああ、勿論さ。
あたしも今日は疲れたよ…。これ以上は出直して来ておくれ。
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それに…貴方達は半日以上、この森を彷徨っていました。
ウール・ボワに流れる時間は歪んでいます。
きっと外ではもう何日も経っている事でしょう…。
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それに…貴方達は半日以上、この森を彷徨っていました。
ですから、まずは一度お帰りになるのがよろしいかと。
…僕達も狼の処罰をしなければいけませんしね。
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……………グルルルル………!
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か、帰りはルボワ様のまじないで一本道を作りましゅねっ!
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…ここから先の旅は、身を危険に晒す事となるだろう。
気をつけてお行き。大いなる獣に食われぬように…。
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レム・ワールドの命運を掛けた「競争」…。
花の娘とルボワ様は、そう仰ったのね。
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…はい。…アルナディアの企ては、間違いなくよからぬ事でしょう。
夢の樹を渡す訳には行きません。…セレナーデ様。
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…再び素晴らしい夢を見るために、歩まねばならないというのなら…。
断る理由も、異なる手段も、今の私達にはありません。
アスセーナ。道を切り開いてくださいますか。
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はっ。三日月の羽根騎士団・団長アスセーナ。
我らが王国の誇りに掛け、必ずしや夢の樹と夢世界を護り通す事を誓います。
訪れる危機も、この剣で振り払ってみせましょう…!
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シロ!聞け!目論みは間違っていなかった!
夢の樹の力を手に入れれば…オレ達の望みは叶うんだ!
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…お帰りなさい、ノクス。
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絶対に勝ってみせるぞ、絶対にだ!
組織も再編に取り掛かる!教会の支援も必要になる!早速会議を…
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ノクス。はやる気持ちはわかるけれど、まず休んでちょうだい。
ピエトロもお茶を用意して待っているわ…。
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…それもそうか?うん。
そうだな…。まずは腹ごしらえだ!おい、今日はドーナツにするぞ!
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ふふ…。
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………。
…私に出来ることは唯一つ…「ノクス様」を支え、真実を取り戻す。
それだけ…それだけよ…。