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………。…あら?
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バルビートにイルミーゼ。ふふっ。
…どうか、あなたたちはいつまでも仲良くね…。
……………………。
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居るのは判っているわよ。
それで、何の用かしら?リンホン。
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………俺も、一緒に行く。
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追放を命じられた罪人は私だけよ。
あなたのことだから、止められなかった自分も同罪…とか思ってるんでしょう?
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そうじゃない。
俺が行きたいから、行くと言っている。
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!!
…私達がここを出たらどうなるか、わかってるでしょ…?
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覚悟の上だ。
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………そう。
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…願い星のこと…。あなたがジーシー様に告げなくても、いずれこうなったと思う。
私達の天神様に隠し事は出来ないわ。
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むしろ…言ったのがあなたで、嬉しかった。
私の我儘を聞いてくれるのは、昔からリンホンだったのよね…。
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…あの星に、何を願ったんだ。
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ふふ…。
…自由になりたかった。ここじゃないどこかへ…外に出たいって。
ほらほら、叶っちゃった。うふふ!
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だって、夜空はもう見飽きたわ。太陽が昇る青空と、鏡のように光る青い海が見たいの。
話に聞いて、ずっとずっと憧れていたのよ…。
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リンホン。…本当にあなた、何もお願い事は無いの?
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………。
天神様に与えられた命を、島の為に全う出来ればいい。
何か望めと言われても、俺は何も思い付けなかった。
だから、願いの尽きないお前が眩しい。
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俺に望みがあるのならば、それは昔から変わらない。
メイラン、お前の願いを叶えたい。
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………!!
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……………わ、私ね…?他にも行きたい所、あるの……。
その…火山が見たいわ。真っ赤な炎が噴き出て、燃えるんですって…。そんな力強い光、見たこと無いから…。
…リンホンも無いでしょ。いつか、見せてあげたいなって…。
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……俺に?
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うん…。
…行きましょう、一緒に。海も山も、なんだって見て周りましょう。
これからは…自由なんですもの!
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……そうだな。きっと、美しい筈だ。
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…………もうすぐ出口ね……………。
ねぇリンホン…。手、繋いでいい?
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…ああ。
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ふふっ…。
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…命の灯りが二つ、消えました。
「島から出た」模様です、天神様。
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……消え失せたか。我が愛しき幻灯よ……。
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貴方の異能の代償は、このリュウシンから出られない事…。
【夢の民】である彼らの命も、島でしか保たれない。
故に島外追放は、リュウシンに住まう者にとって、最も重い刑である。
…そう掟には定められていましたが、私も見たのは初めてです。
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…初めに生み出した螢は、私を理解し…共に世界を生きた。
確かに理想郷を、この手に掴んだのだ。現世の過ちは繰り返さぬと誓った。
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然し、夢の中であれど時は過ぎ去った。
つがいは数を増やし、代が巡り、……心が離れ行くのを感じていた。
…遂に私の目前から姿を眩ませたのか…。
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離さず置く為に敷いた掟も、最早意味を為さぬ。
……命を失う事が、恐ろしく無いと云うのか。
私には解せん。何故…神に逆らい、平和を手放すのだ…?
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………天神様………。