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その男…ジュードが、黒い龍の事を「魔王」と呼んだのかい。
そして自らはしもべである、と…。アルナディアの商人が、ねえ。
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ハイ…確かに、そう言っていました。
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魔王。魔物の王…か。
「魔物の巣」…それが奴らの本拠地と?
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ジュードさんは、「知りたければおいでなさい」と…。
どこにあるかは…ワタシにも掴めていません。
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けれど、突然禍々しい空間に飛ばされた、というヒトはいくらか。
大怪我を負い、死の淵を彷徨って…気が付いたらあの黒い龍が居たそうです。
そこで問い掛けを拒むと、元の世界に戻ったと…。
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そりゃあ…まるで悪夢さね。
……で、パンセレネとアルナディアはどう出るんだい。
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攫われた方々を救うために、「魔物の巣」について調べているようです。
正体は何者なのか、入り口はどこにあるのか…。
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………ルボワ様。
ワタシは…あの場に出て行けませんでした。
あのヒトに、見つかりたくなかったから…。
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そうかい。
…どうしてだか、あんたの未来も過去もあたしの力じゃ視えなくてねぇ。
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エメ。あんたは謎が多すぎる…。
その無垢な少女の願いこそが、甘い罠かもしれないと…疑うのは容易さね。
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……………。
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…それでも、あんたを信じるよ。
レム・ワールドを守りたいんだろう?
最後まで皆を導いておやり。
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…………ハイ。
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ふむ。
瀕死の間際に見た、悪夢の如き夢島…。
恐らく、その場所が「魔物の巣」であろう。
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ゴホッ、ゴホッ…。心配無いワ。
レム・ワールド内に存在する空間である限り、
ソレは夢島として…何処かに必ず具現化されている筈よン…。
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何とかして見つけましょッ!
…ゴホンッ! …ハァ、ハァ…。
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ペ、ペルラ様…。
ご無理はなさらないで下さい。お休みになっていた方が…。
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おバカッ!この非常時に寝込んでなんからんないわよォン!
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起きてらしたんで、ガルニエクランの件を報告したんだがなぁ…。
会議に出る!って止めても聞かなくてな!
なぁに、俺達がきっちりサポートする。心配すんな!
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わ、わかりましたよ…。
(ハァ…これだからスパーツィアの連中は苦手なんだ…。)
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…で、アスセーナちゃんは?まだ部屋に篭ったままかしらン?
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そのようです。
怪我は治療済み…ですが、精神的に堪えたのでしょう。
力及ばず、女王陛下と部下が連れ去られた事で自らを強く責め立てています。
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…暫くは、そっとしておいてあげるのが良さそうねェン…。
彼女もだけど…有志のコ達にも随分無茶させて来たワ。
戦士は…しばし休息としましょ。
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ロジエ前騎士団長。
騎士団の指揮は、一時的に君に任せる。
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…はい。お受け致します。
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コンコンコン!
ガチャッ ギィィ…
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あ、あのぉ〜…。
会議中すみませんっ。ちょっとお伺いしたいことが…!
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女王様のお部屋を掃除してたら、古い本が出てきたんですっ。
ですけど、文字がさっぱり読めなくて…。
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どれどれ………。
…うわ、また読めない言語。手記のように見えますが…。
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筆跡はセレナーデちゃんのものだと思うわン。
でも、アタシにもさっぱり…。
…アンタはどう?読めるかしらン?
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………………いや。
私にも理解不能だ。
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ディアマント様。
新聞社のルーベンス代表に読解を依頼されてはいかがでしょう。
こういったものへの造詣は、かなり深い人材かと…。
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ルーベンスか…。
確かに、彼の得意分野であろうな。手配を頼む。
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新聞社って、あの「プレス・クリール」の…ですかっ!?
……だいじょうぶでしょうか……。
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あー……。アレは半ゴシップ誌ですが…。
ルーベンス局長は、長らくクロノディウムに勤務されていたそうです。
ディアマント様のお墨付きなら…信頼に足り…ます、よね?
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………。
依頼内容に関しての保証は、しよう。
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(…大丈夫…じゃ、ねーかもなぁ…。)
…では続いての議題、ガルニエクランの住民の保護計画について。
住民は全員無事を確認済みです。パンセレネ・イネス地区への仮移住ですが……。
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………………。
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…主様の調子はどうだァ?
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深い眠りについていらっしゃいます。
今は静かですが…時折、酷くうなされていますね。
まるで何かと戦っているような…。
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…なんとか取り返しはしたがよォ。この調子じゃあなァ…。
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凍りついた心を溶かそうと、もがいていらっしゃるのでしょうか…。
嗚呼、恐れていた事が起きてしまった……。
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…あの氷の女王は…オレ達がブッ潰してやる。
ブランシュまで連れて行きやがって…。クソッ!
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しかしよォ。攻め込もうにも、「魔物の巣」…?
聞いた事も無ェ名だ。そいつァ何処にあるってんだ…。
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場所の見当は付いていませんが…。
あの大莫迦者…ジュードの行方を追えば、いずれ辿り着くでしょう。
アルナディアを温床にし、魔王の計画を進行させていたようですからね。
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あァ…アイツも魔王と一緒に姿を消しやがった。
あの様子…全てを把握していると見て、間違いねェだろう。
とっ捕まえて吐かせてやるぜェ…!
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…そうですか。
ブランシュ様は、自らを犠牲にノクス様をお救いに…。
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うん…。
…止めらんなくてゴメンね…。
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貴方がたの罪ではありませんよ。
ジャウハラに出向かれた時から、覚悟なさっていたのでしょう。
あのお方らしい決断です…。
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この島が無事という事は、まだ生きてるって証ですっ!
取り込まれてしまったブランシュ様を、どうかお救い下さいっ…!
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うん。ぜったい…助けるから。
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そ〜〜〜だぜっ!!!
一度敵と遭遇し解析しちまえばこっちのモンだ!
次こそ我が軍勢に!勝利をォ!もたらさん!!!
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はは。頼もしい返事です。
………で。先程から覗き見をしている、君はどちら様?
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…………………ヒィッ!
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えっ?あなたは…。
ま、待って!逃げないでくださいっ!
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君は…近頃、よく教会で見かける子ですね。
人の居ない時を見計らって、祈りを捧げているでしょう。
私達はちゃんと知っていますよ。
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………えと、あの………。
………………………そ、そのっ………………………。
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…あなた、いつも辛そうですっ。
私たちに何か出来る事はありませんか?
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良ければ、我々に話をして戴けますか。
その行為が、君の贖罪となるかもしれませんよ。
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……………………!!!
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おお!
これはこれは…素晴らしい素材を持ち帰りおったな!
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ええ。ノクスは逃しましたが、思わぬ収穫がありました。
彼は立派な魔物の戦士になるでしょう…フフ。
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……………………。
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ブツブツ……妾の馳走が……ブツブツ……。
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ミロワール様…そう気を落とさないで下さい。
必ず彼はまた逢いに来ますから…ね。
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さて…次の舞台はいよいよ我ら魔王軍の巣です。
ブリンガー。準備は整いましたか?
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ホッホッホ…!あとは仕上げのみ!
レム・ワールド各地に遣わせた魔王軍の者達も…。
次々帰還しておるぞ。ホレ!
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キャハハ…!パーティの始まりだネ!
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パーティ?パーティ!
おかしいっぱいたべれるかなぁ?キャハハ!
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そうですね…。
私と致しましては、あともう少しお時間を頂きたい所ですが…。
まだティエンシェン様を”羽化”まで導けておりませんので。
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なかなか強情で困ったもんだ。あの龍神様はよぉ…。
アッハ!アンネローゼはすーぐ占いを信じやがったのになぁ!
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ネージュはシードルちゃんがコッチに来てくれて嬉しいデスよ〜!
ウフフ…ずーっと「素質アリ」って思ってたんデスから!
立派な魔物になるデス!ねっ!
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はぁ?お断りよ!
魔物になんてならないし…貴方達の味方でもないわ。
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私はユールログ様…やっと見つけた私の王子様に着いていくだけ…。
うふふ。もう離さないんだから…!
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…………………。
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フフ。我が軍も賑やかになったものだ…。
……おや。ラティーファ姫の姿が見えませんが?
それに…エールと言いましたか、森の青年も居ませんね。
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左様か?ヤレヤレ…手間がかかるわい。
どれ、迎えを寄越すとするかの…。
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…いえ、お待ち下さい。
彼女達はこのまま放っておくべきかと。
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はて?
…お主、何か策でもあるのか?
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我らの巣への導き手となって頂きましょう。
道が判らず宴に欠席されても困りますからね…。
そうでしょう?魔王様。
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…………。
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…フフ。相変わらず寡黙なお方だ…。
【ここまでのあらすじ】
氷の女王ミロワールの間へと辿り着いた騎士団とアルナディア。
ノクスを救うためブランシュが身を挺するも、その力ごと取り込まれてしまいます。
案内役のシードルは謎の騎士・ユールログを庇い裏切り、
更には「黒い龍」と、アルナディアの商人であったジュードも現れます。
魔王軍を名乗る彼らは、「魔物の巣」で待つと残し氷の島を去るのでした…。
パンセレネはセレナーデ女王の奪還に失敗。騎士・ルシエルも攫われる事態に。
アルナディアはノクス奪還に成功したものの、意識が未だ戻りません。
両陣営は、「魔物の巣」の所在をそれぞれ追い求めます。
その舞台裏では、着々と魔王軍も準備を進めているようで…。