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ふぅ…ふぅ……。
さ…さすがにこんだけ買い込むと重たいべな〜…。
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けんども、スパーツィアとパライソの店さ巡って、うんめえ材料仕入れてきたんだ!
今度こそミロワール様にオラのスイーツ食べてもらうべ!
えいっえいっおー!
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…………んん〜?
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…ビュオォォォオオオ…!
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…んなっ!?
こ、こりゃあ酷い吹雪だぁ…!!
村はなんとも無かったのに…なして城の周りだけ…?
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おぅい!ミロワール様ぁ!ご無事だべか〜!?
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……何者、だ……
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…はいっ?
あ、あんたこそ…どなた?
マントに剣… き、騎士様べか?一体どこの…
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…去れ、此処から…
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うひィッ!?
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…して、彼の者を誘う算段は整っておるのか?影の使いよ。
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ええ、勿論。
じきに貴女の元へ辿り着くでしょう…女王・ミロワール。
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ふふ…!そうか、それは待ち遠しい…!
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み……ミロワール様……?
どこにいらっしゃるべさ!?ガルニエクランに何が…
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やかましいのう…。やれ、ユールログ。
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…去れ!
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シャキィン!!
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ひぇっ! …う、ううぅぅぅ…
………ミロワール様ぁーーーっ!!!
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コスタ・アマナは滅び、オーサルアトゥイは封じられてしまいました。
…我々が介入し、力を奪ったせいで…。
悔いても、悔やみきれません…。
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……………。
このような私に、皆を率いる資格が、あるのでしょうか…。
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アスセーナ…。
辛い思いを、あなたに今…させてしまっているのでしょう。
ごめんなさいね…。
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いえ…あなただけではありません。
無理を強い、過酷な試練を与え…皆を疲弊させ、悲しませてしまいました。
わたくしこそ、女王など名乗るべきでは無いのかもしれません…。
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そんなっ…!
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…それでも。
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わたくしは、貴女に…皆に、願わずにはいられません。
どうか【夢の樹】に辿り着いてほしい、と…。
また笑顔で過ごすことの出来る、素晴らしいレム・ワールドの姿を取り戻す為に…。
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…わたくしやペルラ、ディアマント達は…この夢世界の発展に、ずっと寄り添い続けてきましたから。
長い年月を経て、世界を保つ代償に、欠け落ちていったわたくしの心…。
その中に僅かに残った愛情が、我が子を守りたい、と…そう叫ぶのです。
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…セレナーデ様…。
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アスセーナ。わたくしは貴女を…騎士団を、民を、深く愛し…信じています。
貴女達ならきっと、未来を切り開いてくれるでしょう…。
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さあ、もう夢の世界も眠りに着く時間です。
疲れているのでしょう…今宵はゆっくりとお休みなさい。
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………はい。
失礼します、我が女王様…。
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…………。
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………そこにいるのはわかっていますよ…。
…出てきなさい。 -
…。
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ザワザワザワザワ…!
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たったたたたっ大変なんですーっ!
女王様が… 女王様が…!!!
さらわれてしまいました!!! -
……ええっ!?
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昨日の晩、こつぜんと姿を消されてしまったの…。
セレナーデ様のお部屋には、扉も窓も鍵が掛かっていたんですよ。
見張りの騎士さんも、何も異変は感じなかった、と…。 -
この手紙は、女王様の寝室に残されていた物だ。
エメ殿、何か感じるだろうか…? -
【汝らの月は我々魔の軍勢が戴いた。氷窟の城にて待つ。】
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……………。
…とびきり禍々しいチカラを感じます。
【夢の煙】と、魔物の気配が入り混じったような…。 -
…そうか。やはり……。
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氷窟の城…と言うと、ガルニエクランの事でしょうか。
あの島の女王様も、ここ暫く体調不良で民の前に姿を現さない…と聞いています。 -
その可能性は高いだろうな…。
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エメ殿。急な招集への応答、感謝する。
我々パンセレネはこれより会議の後、セレナーデ様の救出作戦へと移る。
…【夢の煙】にまつわる一件、とも考えられるが…もし何かあれば、力を貸していただきたい。 -
…………ハイ。
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………セレナーデ様が攫われるなんて!!!
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オレ達、女王様を護れなかったんすね……。
……………団長? -
…………。
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だ、団長?顔が青いっすよ!大丈夫っすか…!?
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あ、ああ…。
…心配は無用だ。会議場へと向かおう。 -
(…………私が、)
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(私が、あのままお側に付いていればこのような事態には…。)
(セレナーデ様…!!!) -
…なるほど。
お前の「空間に穴を開ける」異能が、海と砂漠の異空間を造り出したんだな。 -
……そうだ。
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……オレっち、盗賊団に拾われる前の記憶がねぇんだ。
だから他に行くとこなんてなかった。みんな冷たかったけど、認めて欲しくて…。
この力で役に立てれば、きっと一人前になれると思って……。 -
ノクス…。
あなた、この子を私達の仲間にしたいって…本気なの? -
空間に干渉出来る異能は貴重だ。みすみす見逃す手は無いさ。
どうだ?フルム。オレならお前の力をもっと賢く使ってやれる。
…それに、 -
アルナディアは来るものを拒まず、去るものを追わない。
自由に、好き勝手に振る舞えばいいんだ。
お前が何者であろうと関係無い。 -
………!!!
お、オレっち…仲間に、なるぞ!なるなるっ!! -
…そうか!
歓迎するぞ、同胞よ! -
…………。
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…あの子…フルムを迎え入れて、大丈夫なのかしら。
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どうもキナ臭ェニオイがしやがるなァ…。
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本人は何も知らないとはいえ、あの子は盗賊団の…ジュードと繋がりを持つ子だわ…。
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ノクス様がああ仰った以上、どうにも出来ないでしょう。
…全く。貴女が教会で彼を拾わなければ、厄介な事にはならなかったのですよ。
………フン。 -
…ジュードの消息は、もはや完全に絶たれてしまいました。
店にも、取引先にも、顔を出していないのだとか…。 -
機を狙い、奴は必ずアルナディアに仕掛けて来るでしょう。
ブランシュ、ノワール、ノクス様をお護りするのですよ。良いですね? -
ええ、もちろんですわ。
私達の大切な主様を、なんとしても守らねば…。 -
あァ。当然だ!
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……ドサッ!
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…?庭先から音が…何かしら。
………まあ!人が倒れているわ…!! -
…………うぅうん…………。
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良かった…大きな怪我はないみたいね…。
とりあえず、教会で手当てをしましょう。
ノワール、運ぶのを手伝ってちょうだい。
……あら、これは………手紙………? -
【汝らの求めし真実は鏡の中にあり。答を得たくば氷窟の城へ】