コスタ・アマナ前編1/2 ジャウハラ前編1/2 幕間 後編1/2
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ペルラ…。具合はいかがかしら?
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………ハァ………ハァ………。
何とか命は大丈夫そうよォン…暫く島から動けそうにないけどねン。
悪いわねェ。セレナーデちゃんも調子悪いのに、わざわざ出向いて貰っちゃって…。
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わたくしの事は気になさらないで…。
ペルラ、あなたが倒れては、夢の樹を待たずとしてレム・ワールドは崩れ去ってしまいます。
どうか今はゆっくりと休んで頂戴…。
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………えェ………。
…でも……オーサルアトゥイの封印が、まだ…そのまま……。
……あの子を…閉じ込めたままには……出来ないワ…。
ハァ…… …グゥッ!
……どうか……あの子達も……助けてあげて…ねェン……。
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…ええ。
皆を救ってみせましょう、必ず…。
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…それがですね、コスタ・アマナの住民は、ほとんど口を聞こうとしないとの報告が入っています。
得られたのは僅かな情報のみ。これ以上彼らを問い詰めても成果は得られないだろう、と…。
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黙秘か…。
未だ、王子の異能の影響が残っているのであろうな。
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ジャウハラは…【夢の結晶】の除去が完了し、住民も正気を取り戻しつつあります。
ラティーファ姫様の聴取は、ロジエ前騎士団長が現在執り行っているそうです。
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そうか。調書が上がり次第、報告を入れるように。
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…で、結局ラティーファ姫はロジエさんが助けたんだって?
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そーそー。俺達が異空間で迷子になってる間にさ、宮殿に辿り着いたらしい。
姫様、すっかりロジエさんにメロメロで…。
折角だしそのままお任せしてきたって訳。
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はあ…。
…お前、元従者だろ?その…嫉妬とか、こう、無いのか?
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いやぁ…俺、姫様が苦手で逃げ出してきたようなもんだからねぇ…。
あのヒト、何を腹の底で考えてるのか読めないんだよ。
それがどうも気味悪くってさぁ…。
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まあロジエ様。今宵も逢いに来てくださったのね!
あなたならわたくし、いつでも歓迎いたしますわ。うふふ…。
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…それはどうも、身に余る光栄です。
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わたくし…心から感謝していますのよ。
暗く陽の射さぬ地下牢に閉じ込められたわたくしを、救い出してくれたのですから…。
あなた、今はパンセレネの騎士団を離れた身なのでしょう。
ジャウハラの騎士として…このわたくしに仕える気はなくって?
宝石なら、いくらだって与えて差し上げますわ!
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…ジャウハラの宝石は、ラティーファ姫の異能によって生み出されているそうですね。
これは、耳にした噂話なのですが…。
…コスタ・アマナの王子の装飾品…【夢の煙】が取り付いた赤い宝石。
なんでも、最近ジャウハラから買い付けたばかりの品だったとか。
貴女の国はレム・ワールド有数の宝石産出国ですから、偶然かもしれませんが…。
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………。
あなた、わたくしを疑っているのね…?
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ええ…非礼を詫びましょう。
姫様には、この事件の経緯を、ご存知の限りお話して頂きました。
ですが…そのお話にはいくつか、不可解な点も見受けられます。
…まだ何か、我らに隠し事があるのでは?
教えて戴きたい。貴女が何を知っているのか…。
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…………。
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…ふぅ。まだ夜は少し冷えるわね…。
………あら?
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…………ハァ…。
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こんばんは。
教会に何か御用ですか?
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…っ! う、うわぁっ!?
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まあ…驚かせちゃったかしら。ごめんなさいね…。
…大丈夫。どんな事情を抱えた誰であっても、この教会は皆を受け入れますよ。
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………お、オレっちは…だって…その…。
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グギュルルルルゥ…
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…う、うううう…。
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…ふふっ!
今晩の夕飯当番はシェリーなの。あの子のスープは美味しいのよ。
さあ、あなたもいらっしゃい…。
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………おう。
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カランカラン…
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アラ…お客さん?今晩はもう閉店で…
………まあ!
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久し振りですね、アデレード。
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ピエトロおじ様がウチの店に来るなんて…珍しい事もあるものね。
ジュードに用事?生憎、今日は出掛けているのよ。
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ええ、目的はその通りですが……そうですか。
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…ここの所、店を開ける日の方が多いのよ。
ジュード目当ての客も少なくないのに、困った店主よね。
一体何をしているのかしら…。
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奴の不審な動きには、貴女も勘付いていましたか…。
私には、ノクス様をお護りする義務があります。不穏な影は取り除かなくては。
近頃の奴について、話を聞かせて貰いますよ。
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空間の神・ペルラによって封印されたオーサルアトゥイは、時の流れごと停止しているようです。
こちらから干渉は出来ませんが…ペルラは異空間の修復に力を使い果たし、弱っている。
封が解かれるのも時間の問題でしょう。
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フム。報告御苦労であった、ジュードよ。
魔女アンネローゼの”羽化”は、後一歩のところで邪魔が入ってしまいました…が。
次はこうは行かせまい。そうでしょう…魔王様!
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…………………。
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さささ…次はそなたの出番ですぞ、クイーン・ミロワール!
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…ふふっ。
ああ、楽しみじゃのう…。
妾はこの刻を…ずっと…ずうっと、待っておったぞ。
新月の王よ…。其方こそ、妾が求めていた存在。
この昏い穴を埋めておくれ…!