コスタ・アマナ前編1/2 ジャウハラ前編1/2 幕間 後編1/2
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ザッッパァァアン!!!
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ぐウァッ………!!
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ふふ…ジャラールよ。大地の化身たる貴様にこの大海原は堪えるだろう…。
承知の上で敵地に赴くとは愚か者め!
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がはッ… ハア…ハア……。
…グワハハハ!なんのこれしき………!!!
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ブワッシャアアアッ!!!
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パアアアア…
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……ぐっ……日差しが!!
まさか、雲を割っただと…!?
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小波如きで我は沈まぬ!
お主と再び相見える此の時を!待ち望んでおったのだ!
我らの間に情けは無用!さあ…全身全霊で掛かって来るが良い!!
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………良かろうッ!!!
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ザザザァァアン…!!!
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ドンドン!!!ドンドンドン!!!
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…ダメだ!この城門、びくともしないっす…!
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くっ…。…どうやら強力な結界が張られているようだな。
アルナディアが城へ突入したとの報告は受けている。一歩遅かったか…!
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クソッ!クソッ!!なんだよコレ、身動きが…!!
僕を離せ!このクズ共がぁっ!!!
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あはは!無駄だよ王子さまー。
ノクスちゃんの金縛りはね、一度かかったらしばらくだーれも解けないのっ!
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結局また鬼ゴッコになっちまったなァ…。
ま、今回はアルナディアに軍配が上がったがな!ガハハ!
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…だ、誰か!誰かいないのか!?
セバスチャン!使用人!君達は僕の味方だろう…!?
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…来い、クレタ。お前に任せる。
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……………はい。
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………!?
だ、誰だい、君は…。
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やっぱり、覚えていらっしゃらないのですね。
無理もありませんわ。だってあれはコスタ・アマナが出来る前の話…。
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ヒィッ…!?
や、やめろ…やめろ…!
そのナイフで何をするつもりだ…!
近寄るなァッ!!!
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わたしは…かつて、王子さまの気まぐれで生まれ落ちた娘。
あなた様の夢の民なのです。
あなた様に飽き捨てられ、わたしは泡となり消えることすら出来なかった…。
そんなわたしを、オーサルアトゥイは受け入れてくださいました。
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…アンネローゼ様を再び脅かすと言うのなら、
その氷よりも冷たく、決して救われない心。
わたしがこの刃で、解き放ってさしあげましょう!
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ザシュッ!
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…〜♪ ♬♪♫ ♩♪〜♬…
……おやすみなさい、安らかに……。
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…………………………クレタ………?
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ザァァァァ… ザァン…
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お、お聞き下さい!アンネローゼ様っ…!
クレタさんが、あの王子の命を奪いましたわ……!
その、つまり…………王子の夢の民のクレタさんも、一緒に、消えて……。
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………………………………!!!
…………嗚呼…………なんて……こと…だ………。
私が無力ゆえに……あの子の命が………………!!!
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…アンネローゼ様!危ないですわ!
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シュウウウウウ…
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ッ…!??
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ズドォォォオオオン!!!!!
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キャアアアアアーッ!!!
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…隙を見せたな、アンネローゼよ!
あまり我を落胆させるでない。さあ…立ち上がるのだ…!!
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……う、ううっ………ケホ…ケホ……。
あ、アンネローゼ様っ!!ご無事ですか、アンネローゼ……さま……
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………………………
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………あ……ああ…っ…………!!
そんな……アンネローゼ様………息、が………?
目を…目を覚ましてくださいまし…!!
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…んァ?
おい……あの……黒い雲は何だァ……?
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…雲?
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ゴゴゴゴゴゴゴ………
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…空が…暗く、覆われて行くっす…!?
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ピシャアアアアッ!!!
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………………ギィィ…………。
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…………。
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………!?巨大な、竜…!?何処から…
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………ズォォォ…ォォォォ………
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…魔女に…力を注いでやがるのか…!?
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ズオオオオオオ…!!!
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カッ!!!
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…………………………
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…………お、お主……その姿は…………。
…アンネローゼ、なのか……………?
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………………………………!!
…………………
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ビュォオオオオ……ゴオオオオオ…!!!
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!! 不味い…また海が荒れ始めた!
あの女の仕業か…!?………もしや、彼女は……?
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ゴオオオオオオオ…!!!!!
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…皆!城の中へ避難するんだ!!
アルナディアも急げ!巻き込まれたら命は無いぞ!!
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ロジエ殿!今まで一体何処に…!?
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話は後よン!…お下がりなさい!!
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ペルラ様っ!?
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パアアア…!
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………空間の穴が塞がれて行く………。
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シュウウ………
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…風の音が聞こえない。
嵐が…収まったのか…?
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………ハア………ハア………。
…お待たせしたわねン、みんな♥
安心なさい。空間は元に戻したワ。
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ペルラ様…!
今、何をなされたのですか?
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…そうねェン。
ざっと説明するけれどォ、難しかったら聞き流してちょうだい。
夢島はね、基本的に独立した空間なのよン。
主同士の合意の元合併させない限り、島と島の行き来は《虹の門》によるワープ以外不可能…。
そういう風にアタシが作っているの。
でも、別の異能を持つ誰かさんが…
このシステムに文字通り穴を開けたみたいねェン。
開いた穴同士は空間が繋がって、モノの行き来が出来るようになってたわン。
その穴をたっくさん開けて、空間ごとなだれ込むようにしたんでしょうねェン…。
ほんっと穴ボコだらけだったわ!治すのにどれだけ時間が掛かったか…!
キィーッ!見つけたらタダじゃ済ませないわよォッ!!
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は、はい…。
それで、我々が今いる島は… …コスタ・アマナになるのでしょうか?
ジャウハラと、オーサルアトゥイは…。
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穴を塞いだら、ジャウハラは自然に分離したワ。
オーサルアトゥイは…ついでに、アタシが一時的に隔離措置を取ったの。
魔女ごと、封印を…ねェン。
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封印、だと…。
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アタシは夢世界空間の管理者ですもの。正規に作られた夢島への介入は可能よン。
…あの子の暴走を止められなかった以上、こうするしか無かったのよォ…。
もしあのまま放っておけば、彼女と一緒にオーサルアトゥイは崩壊していたでしょうねェン。
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禍々しい力はもう感じ取れません。
ペルラさん…ありがとうございました。
今回の件を受けて、ルボワ様から皆さんに大切なお話があるそうです。
ウール・ボワへお越しください。
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ゴゴゴゴゴッ…!
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チィ…!…流石に主が不在じゃあ長くは保ちそうに無いわねェン…。
アスセーナちゃん!早く避難させましょ!
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は、はい!
そうか…!フィリップ王子が亡くなった事で、彼の夢島たるコスタ・アマナも消滅しようとしているのか…!
ここはまもなく崩壊する!皆の者、虹の門に急げ!
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ザワザワ…!
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……アルナディア!
話はウール・ボワの森で付けるとしよう。
…あの黒い竜…。どうやら、本当に競い合ってなどいる場合ではないようだ。
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………ああ。
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………王子……フィリップ王子………。
冗談はおよしください……目を覚ましてください……ああ……。
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大臣さんっ!急ぐっすよ、ホラ!!
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ガラガラガラガラ…
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…………。
…このヒトはあたしが連れてってやるよ。ルシエル、あんたは住民を助けといで。
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ほ、ホントっすか!?任せたっす!!じゃっ!
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…おーおー、疑いの余地ナシかい…。まっすぐなこって!
それで気が引けたりするあたしじゃないけど、ねえ。
さて…大臣さん、宝石は持ったかい?
王子の形見だ…大事にするんだよ。
あたしらに必要なのは【夢の煙】だ。残りの宝石はあんたにくれてやるさ。
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う、ううっ……。王子… 王子…!!
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仕方がないお人だねぇ…。
…よっと! ほら、ちゃんと背中に捕まっときな。
そいじゃあ、新月の都へご招待しますかっ!
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…さて。話をまとめようじゃあないか。
まずあんたらは、海と砂漠の国にそれぞれ出向いた。
海では王子が【夢の煙】の取り付いた宝石をもって力を振るい、
砂漠では鉱石と化した【夢の煙】を住民が貪り狂っていた…。
形を変えた【夢の煙】を集める最中、
何者かの力により海と砂漠が混ざり合い、異空間が生まれた。
そこに、何処からか「黒い龍」が現れたんだね。
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争いに敗れ…倒れこんだアンネローゼさんに、「龍」がチカラを与えたのでしょう。
…立ち上がり、姿を変えたアンネローゼさんからは…これまでとは違うオーラを感じました。
それはまるで…
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…魔物のような。
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………ああ。
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魔物…レム・ワールドを脅かす謎の化物の、総称。
増えこそしたのは最近だがね、昔からずっとあいつらはいたのさ。
その割には正体を誰も掴めやしなかった。
あたしも幾度と無く、過去視の力で探ってみたんだがねぇ…。
…時渡りさえ封じられてなきゃあ、直接調べに行けたんだがね。
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アンネローゼ様は、本当に魔物になってしまわれたのでしょうか…。
つまり、信じたくはありませんが…
魔物の正体は、元は我々のようなレム・ワールドの住民であった、と…?
魔物には…知性を失った獣もあれば、ほぼ普通のヒトと変わりない個体も存在します。
何故彼らの正体を、誰も気が付くことが出来なかったのでしょうか?
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……………。
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…過去を詮索しても何も始まらない。
オレ達がこの事実に…魔物の真相に気付いた、それが今は重要だ。
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そうさね。
あんたらは未来を作って行けるんだから…。
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…「黒い龍」からも、【夢の煙】のようなチカラを感じました。
コレまで感じてきた、どの欠片よりもずっとずっと強大なモノを…。
あの「龍」は間違いなく、消えた【夢の樹】の鍵を握っているコトでしょう。
「黒い龍」を探しましょう。
皆さんの力を合わせれば、きっと辿り着けるハズですっ!
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……………。
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……………。
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………龍も樹も、絶対に見つけてやるさ。
だが…「力を合わせて」は、御免だな。
【夢の樹】はオレ達アルナディアが戴くんだ。パンセレネの手なんざ借りるものか!
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…貴様らに【夢の樹】を明け渡すなど、それこそレム・ワールドの崩壊だ。それだけはさせん。
エメ殿、我々三日月の羽根騎士団が必ずや平和を切り開いて見せましょう。
今後もお導きをお願い致します…。
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………やれやれ。どっちのお月さんも、頑固だねぇ…。
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………そう、ですね………。
【ここまでのあらすじ】
空間を司るペルラの介入により、混ざり合った異空間は元へ戻りました。
海の都オーサルアトゥイは、暴走した夢島の主・アンネローゼごと封印されてしまいます。
魔物のような何かと化した彼女の影には、謎の「黒い龍」…。
エメはその龍こそが、【夢の樹】の鍵を握る存在と確信します。
かくしてパンセレネとアルナディアは、「黒い龍」を追い求めそれぞれ動き始めます。
しかし、相容れない思想の両陣営は、頑なに手を取らず、競い合うのでした…。