コスタ・アマナ前編1/2 ジャウハラ前編1/2 幕間 後編1/2
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………はぁ。
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ズシン…ズシン…
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御機嫌よう、ラティーファよ。
溜息などついてどうした。美しい顔が台無しではないか。
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ジャラール様…!
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どうか、どうか…皆を開放してくださいまし!
ジャウハラの財宝がお目当てなら全て差し上げますわ!だから…!
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グワハハハハ!
そのような声を聞き入れると思うておるのか?己の身の程を知れ!
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お主と此の国には金銀財宝以上の価値がある。砕け散るまで使うてやるぞ…。
せいぜい此処で囀るが良い。グワハハハハハ……!!!
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はーっ…。
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調子に乗せすぎたかしら、あの筋肉ダルマ…。
致し方ないとは言え、あのような輩に捕らわれるなんて不名誉極まりなくってよ。
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…きっと、伝書はもう届いた頃合いね。
ふふっ。…さあ、わたくし達を愉しませてくださるかしら?。
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来たよー、スパシくーん。
僕、広報課なんだけど。一体何の御用?
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遅いっ!!!
緊急の連絡には即時対応するよう心掛けろお前は!
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おお怖い怖い。時間に厳しいのは大臣様だけで結構ですよ、っと…。
…ん?その手紙は?
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つい先刻、クロノディウムの庭園で傷だらけのシンボラーが保護された。
で…脚にその手紙が括り付けられてたんだよ。ほれ。
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………ふんふん。
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おそらくジャウハラの言語と踏んで、お前を呼んだんだ。
確か出身がそこなんだろ?読めるか?。
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…げっ。
ああ…うん。確かにこれは、ジャウハラからの手紙だよ…。
我らが主、ラティーファ姫からの…SOSだ。
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………盗賊によるジャウハラの侵略に、島民の異常、姫の幽閉。
確かにラティーファ姫本人からの書状であるのだな、アルマーザ。
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はい。筆跡は姫のものと酷似しています。
ただ…ジャウハラ王家の印章が押印されていない点が気掛かりですね。
偽造文書の可能性は捨て切れませんが、よほど切迫した状態とも考えられます。
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通信も試みましたが、全く繋がりませんでした。
交易も盛んな友好国です。それがパンセレネに応じないと言う事は…。
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異常事態と捉えて良いだろう。
然し、コスタ・アマナ護衛の件で、特別騎士団の編成が既に組まれている。
真偽の定かでない情報に、調査の人員はそう多く割けまい…。
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…いいえ、すぐにアスセーナを招集してください。
隊を二手に分け、姫の救出と島の調査に向かいます。…げほ、こほっ。
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…女王。体調が優れないのであろう、休息を取るようにとあれ程。
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休息なら、もう十分頂きました…。わたくしの心配は要りません。
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リュウシンのように、【夢の煙】による異変とも考えられます。
皆に無理を強いてしまいますが、放ってはおけません…。そうでしょう?
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…確かに、可能性の否定は出来ん。
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それに…アルマーザ。貴方は彼の国で、ラティーファ姫の従者を務めていましたね。
忠信に偽りは無かったと聞いております。どんな情報よりも信頼の出来る話ですよ。
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ジャウハラはパンセレネにとっても大切な存在です。わたくし達で力になりましょう。
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さて、ジャウハラの話は既に耳にしたと思うが…。
コスタ・アマナとは別部隊として、ジャウハラの姫救出及び調査隊が編成される。
私とルシエルはコスタ・アマナ部隊を率いる。リコリスはジャウハラに回ってくれ。
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承知しました。
他に引率の者は決まっているのでしょうか?
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その件なのだが…。
今回はどちらも国交に深く関わる大事な任務となる。必ず成功させねばならん。
ゆえに、彼に助力を申し出た。
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やあ、こんにちは。
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……あなたは……!
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前騎士団長、ロジエ様!?
随分前に退団されてから、もう剣は取らないと仰っていたのに…。
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そのつもりで居たさ。…けれど今はレム・ワールドの危機。
私に貸せる力があるのなら、役立てるべきと思い直したんだ。
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ロジエ殿には全体の指揮を執っていただく。リコリスは団員の引率を任せよう。
連絡は随時行い、何かあれば両隊すぐに駆けつけること。良いな?
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はい!
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少しの間、お世話になろう。宜しく頼むよ。
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ふうん。コスタ・アマナに立て続けてジャウハラねぇ…。
こりゃまた、とんでもないことになりそうだ。かっかっか!
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こちらがお約束の品になります、ノクス様…。
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おお…! これを…この時をオレは待っていた…!
くっくっく…でかしたぞジュード!
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…期間限定の新作、トリプルチョコレートルナ・ドーナッツ!
うん、美味いな!
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左様でございますか。
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……………。
…ノクス様。本題に入っても宜しいでしょうか?
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むぐむぐ…… …ふぅ。
ああ、いいぞ。アルナディアへの朗報と言っていたな…何の話だ?
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私の個人的な取引相手に、ブルカーン盗賊団と名乗る組織が御座います。
金銀財宝を目当てにレム・ワールド中を荒らし回る下賤な賊ですがね。
彼らが近頃、ジャウハラを密かに占拠したと情報が入りまして。
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ジャウハラ…宝石砂漠の国か。
あの国の資源の豊富さはレム・ワールドでも類を見ない。
あらゆる者が狙いを定めるが、姫君の策により護られ続けていると言う…。
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ええ。かねてより盗賊団も襲撃を仕掛けていましたが…。
ある時訪れると、様子が普段と違ったのです。
普段は温厚な住民が皆、とある種類の鉱石を巡って狂ったように奪い合っていたのだ、と…。
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ジャウハラの住民は鉱石を食す子鬼族。そして、こちらが件の鉱石です。
虹色の輝き…見覚えは御座いませんか?
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…似ているな。エメが【夢の煙】を吸収した時の光に。
リュウシンの星の子は、灯籠に煙が取り憑いたものだった。
今度はこの鉱石に…?
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大いに考えられます。調査の価値はあるかと…。如何でしょう?
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お待ちなさい、ジュード。
…何を企んでいる。
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…はは!そう恐い顔をしないでくださいよ。
我らが主の理想を叶えるべく、忠実に働いているに過ぎません。
導いて差し上げますよ…貴方もね、ピエトロ。
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……本当に可愛げの欠片もありませんね、まったく…。